「2020年グローバル不動産投資戦略」の中間レポートを発表
―日本を含むアジア太平洋地域が経済復興の牽引役に―
報道各位
2020年7月30日
ラサール不動産投資顧問株式会社
世界有数の不動産投資顧問会社であるラサール インベストメント マネージメント インク(本社:米国イリノイ州シカゴ、最高経営責任者:ジェフ・ジェイコブソン、以下ラサール)は、世界の不動産投資の展望「2020年グローバル不動産投資戦略」の中間レポートを発表しました。「グローバル不動産投資戦略」は主要30カ国における不動産投資を毎年展望し、例年2~3月に年初時点、7~8月に年央時点の展望を世界の投資家にお伝えしています。以下、その概要をお知らせいたします。
世界の国々は、第2次世界大戦以降の平時において最も厳しい状況にあります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生は誰にも予期できませんでしたが、このパンデミックは世界で最も急成長を遂げているアジア太平洋地域にも、その発展を阻害するテールリスクをもたらしました。しかし、アジア太平洋諸国の政府に対する高い信頼感、景気後退から復興への素早い立ち上がり、前例のない金融政策 および財政政策の導入、そして世界的なサプライチェーンとしての同地域(特に中国)の重要な役割が、地域復興の牽引役となっています。パンデミックがいつまで続くかは不明ですが、ラサールのグローバル不動産投資戦略の中間報告書では、これらのマクロ要因と、発表頻度の高い経済指標が、アジア太平洋地域の経済と不動産市場に関するラサールの見通しに反映されています。
アジア太平洋地域は公衆衛生政策が相対的に成功したことにより、他の地域よりも早くパンデミックの危機から抜け出しそうです。しかし、他の地域と同様に、時折発生する新たな感染で後退を余儀なくされることもあり得ると考えられます。ラサールが考える、アジア太平洋地域の主要国におけるCOVID-19収束後の復興度合いのランキングでは、中国が先頭に立ち、次に日本、韓国、シンガポール、オーストラリア、香港が続きます。今後の展望としては、国内経済の規模が大きく、回復のペースが力強い中国、日本、韓国が経済復興を主導するでしょう。
物流施設の発展、実店舗商業施設の衰退、居住用不動産の市場細分化(高級住宅、都心高層住宅、郊外型中層住宅、勤労者向け住宅、高齢者コミュニティなど)、代替セクターやニッチ・セクターの主流化、 そして不動産に関する多くの意思決定を推進するであろうテクノロジーの重要性の高まりなど、パンデミックはラサールがアジア太平洋地域で長年にわたり追いかけてきた既存のトレンドを加速させました。私たちは引き続き、同地域の物流施設セクターを好感しています。また、今後、複数のアジア太平洋諸国のなかで、専門家によって管理運営されている賃貸マンションが、興味深い投資機会を提供すると確信しています。日本を除く同地域の賃貸マンションセクターは、ほとんどが大手不動産会社が管理運営する高品質化・規格化がされておらず、今後、居住者に住み心地の良さと快適なテレワーク環境を提供することが魅力的なアプローチになるでしょう。
ラサールのグローバル投資戦略・リサーチ責任者であるジャック・ゴードンは、「COVID-19の危機とその後の世界的な景気後退は、ポートフォリオの構築に関する重要な教訓を投資家に自覚させました。さまざまな種類の不動産物件が、グローバルなマクロイベントに対してそれぞれに異なって対応しており、そうした物件の収益性は、国ごとの事情よりも、金利、パンデミック、あるいはテクノロジートレンド等の国境を越えた環境の影響を受けています。これは、主要な物件タイプのパフォーマンスが、これまでにないほど多様化している状況を反映しています。不動産の収益利回り(キャップレート)が低下する時代では、主要な物件のタイプすべてにおいて、パフォーマンスが近似化する傾向にありました。しかし、今回の景気後退局面では、物件タイプごとに異なる様々なリスク・リターン特性が顕在化しています」と話しています。
また、「不確実性が急速に高まる時代において、優れた投資判断のために注意すべきことは、思考を『直近効果』に支配されないようにすることです。言い換えれば、このCOVID-19のような目先の危機にとらわれず、その先を考えることが、生き残りと成長のために不可欠です。投資家に限らず社会全体が、最悪期の先を見据えた課題への対応を迫られています。あらゆる産業と社会のすべての側面において重要な役割を担う不動産業界は、一時的な変化と恒久的な変化との違いに特に注意を払わなければなりません」と話しています。
ラサールのアジア太平洋地域投資戦略・リサーチ責任者であるエリーシャ・セは、「パンデミックが猛威を振るうなか、アジア太平洋地域の不動産資本市場は総じて安定しています。多くの投資家は新たな投資機会に関して静観の姿勢で、既存のポートフォリオに神経を注いでいます。ここ数十年で最悪の景気後退にもかかわらず、アジア太平洋地域では不動産物件の大幅な値引きはみられません」と話しています。
また、「最も不透明な要素は、不動産物件のキャッシュフローと営業純利益(NOI)の見通しです。感染の第二波が現在よりもはるかに深刻になる、あるいは感染が想定以上に長期化すれば、NOIは予想以上に悪化し、価格動向にも悪影響を与えます。逆に、資本市場のボラティリティ上昇は安全資産への逃避を促し、コア資産のキャップレートを押し下げて価格上昇につながります。こうした傾向は、キャッシュフローを安定的に生み出す資産とそうでない資産との価格ギャップを拡大させるでしょう。アジア太平洋地域におけるラサールの物流施設セクター戦略は、今回のパンデミックに対しても功を奏してきました。物流施設セクターはCOVID-19パンデミックの影響を受けないわけではありませんが、今回の世界的な需要ショックのなかでは相対的な勝者です。要するに、資産運用マネージャーが、価値を『生み出す資産』と『生み出さない資産』との間で裁定取引を実行するように、COVID-19パンデミックはアジア太平洋地域において、リスクと同時に潜在的な収益機会をもたらしています」と話しています。
日本の不動産市場について、ラサールの日本法人であるラサール不動産投資顧問の代表取締役社長、キース藤井は、「日本の主要な不動産市場と不動産セクターでは引き続きパフォーマンスは良好で、中でも物流施設セクター、住宅セクター、オフィスセクターが最も底堅く推移しており、パンデミックによる一定の下振れの影響を緩和しています。小売セクターとホテルセクターは、当然ながら大半のグローバル市場と同様に、パフォーマンスの下押し圧力の課題に直面しています。アジア太平洋地域で最も機関投資家が主体の市場である日本の不動産市場では、規模的に潤沢な流動性が投資家に提供されていることが、不動産市場における価格形成を下支えています。したがって、こうしたトレンドが引き続き投資家需要を主導するとみており、これはとりわけ長期的に、日本のコア不動産に当てはまります」と話しています。
ラサール インベストメント マネージメントについて
ラサール インベストメント マネージメントは、世界有数の不動産投資顧問会社です。世界規模で、私募、公募の不動産投資活動、負債性投資をしており、総運用資産残高は約650億ドルです(2020年3月末現在)。主要顧客は、世界の公的年金基金、企業年金基金、保険会社、政府関連、企業、その他基金(大学基金他)などで、世界中の機関や個人投資家の資金管理を行い、セパレートアカウント型、オープンエンド型ファンド、クローズドエンド型ファンド、公募証券、エンティティレベル投資等の手法で投資を行っています。また、世界最大級の総合不動産サービス企業であるジョーンズ ラング ラサール グループ(ニューヨーク証券取引所上場:JLL)傘下にあります。なお、ラサール不動産投資顧問株式会社は、ラサール インベストメント マネージメントの日本法人です。詳しい情報は、www.japan.lasalle.comをご覧ください。